新NISAで元本割れは起こる?初心者向けのリスク対策と安心投資の考え方
投資の第一歩は「リスクを正しく理解すること」から
新NISAに興味はあるけれど、「投資はなんだか怖い」「元本が減ったらどうしよう」といった不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。投資には確かにリスクが存在しますが、それらを正しく理解し、適切な対策を講じることで、不安を大きく軽減し、安心して投資の一歩を踏み出すことができます。
このコラムでは、新NISAで投資を始める際に知っておきたい元本割れのリスクと、そのリスクを管理し、軽減するための具体的な方法を分かりやすく解説します。
新NISAで元本割れは「起こり得る」
まず結論からお伝えすると、新NISAであっても元本割れ(投資した金額よりも資産の価値が下がってしまうこと)は起こり得ます。新NISAは、投資で得た利益が非課税になるという大変魅力的な制度ですが、非課税制度であることと、投資そのものにリスクがあることは別の話です。投資の対象となる株式や投資信託などの金融商品は、常にその価値が変動しています。
元本割れにつながる主なリスク要因
元本割れは、主に以下のようなリスクが原因となって発生します。
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価格変動リスク 投資対象となる株式や投資信託などの価格が、経済状況の変化、企業の業績、世界情勢などさまざまな要因によって変動するリスクです。例えば、投資した会社の株価が下落したり、投資信託が組み入れている株価全体が下がったりすると、資産の評価額が購入時よりも下回り、元本割れの状態になります。これは、投資において最も一般的に直面するリスクと言えるでしょう。
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為替変動リスク 外国の株式や投資信託など、円以外の通貨で取引される金融商品に投資する場合に影響します。例えば、アメリカの株に投資し、その株自体の価値が上がったとしても、円高ドル安に為替レートが動くと、円に換算した際の価値が目減りし、結果的に元本割れにつながる可能性があります。
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信用リスク 投資対象としている企業や国が経営破綻したり、債務不履行に陥ったりするリスクです。投資信託の場合、複数の企業や債券に分散投資されているため、個別の企業の破綻が直接元本割れに直結するケースは稀ですが、全くゼロというわけではありません。
新NISAで元本割れのリスクを軽減する具体的な対策
元本割れのリスクはゼロにすることはできませんが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑え、長期的に資産形成を進めることが可能です。
対策1:長期・積立・分散投資の徹底
投資の基本的な考え方であり、リスク軽減の王道とされているのが「長期・積立・分散投資」です。新NISAは、この考え方を実践するのに非常に適した制度と言えます。
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長期投資で「時間の分散」を図る 投資期間が短いと、一時的な価格変動の影響を受けやすくなります。しかし、数十年といった長い期間で投資を続けることで、市場の一時的な下落から回復する時間的余裕が生まれ、全体としての価格変動リスクを抑えることができます。
【ケーススタディ】市場の大きな下落を乗り越える 例えば、2008年のリーマンショックのように世界経済が大きく落ち込んだ時期に投資を始めたとします。当初は評価額が大きく下がるかもしれません。しかし、その後も毎月一定額を積み立て続け、10年、20年と投資を継続すれば、市場は徐々に回復し、資産は成長していく傾向にあります。
一般的な全世界株式のインデックス(市場全体の値動きを示す指標)に連動する投資信託に、毎月3万円を積み立て投資した場合、一時的な下落局面があっても、長期的に見れば右肩上がりに資産が成長しているというデータが数多く示されています。これは、経済が成長し続けるという前提に立つと、時間の経過とともに投資商品の価値も高まる可能性が高いことを意味します。
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積立投資(ドルコスト平均法)で「購入時期の分散」を図る 毎月決まった日に決まった金額を投資する方法を「積立投資」と呼びます。この方法のメリットは、価格が高い時には少ない量を、価格が低い時には多くの量を購入することになり、結果的に平均購入単価を平準化できる点です。これを「ドルコスト平均法」と呼びます。高値で一気に買ってしまい、その後に価格が下落する「高値掴み」のリスクを軽減する効果があります。
【ケーススタディ】価格変動時の積立効果 例えば、ある投資信託を毎月1万円ずつ積み立てるとします。 * 1ヶ月目:基準価額が10,000円 → 1単位購入 * 2ヶ月目:基準価額が8,000円に下落 → 1.25単位購入 * 3ヶ月目:基準価額が12,000円に上昇 → 0.83単位購入
このように、価格が下がった時には自動的に多く買い付け、価格が上がった時には少なく買い付けるため、購入単価の平均が平準化され、長期的なリターンが安定しやすくなります。
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分散投資で「資産・地域の分散」を図る 一つの商品や地域に集中して投資するのではなく、国内外の株式、債券など、複数の種類の資産に投資先を分散させることで、どれか一つの資産が値下がりしても、他の資産でカバーできる可能性があります。新NISAでは、「全世界株式型」や「全米株式型」といった投資信託を選ぶことで、これ一つで既に高度な分散投資が実現できます。
対策2:リスク許容度を理解し、適切なポートフォリオを組む
自分がどれくらいの損失であれば受け入れられるか(リスク許容度)を事前に把握し、それに合った投資商品や資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を選ぶことが重要です。 例えば、元本割れを極度に避けたい場合は、株式の比率を抑え、比較的価格変動が小さいとされる債券の比率を増やすといった選択肢も考えられます。
対策3:生活防衛資金を確保する
投資を始める前に、緊急時に備えるための「生活防衛資金」を確保しておくことが非常に重要です。病気や失業、急な出費など、万が一の事態に備えて、生活費の半年分から2年分程度の現預金を、投資とは別に確保しておきましょう。これにより、市場が下落している際に無理に投資資金を取り崩す必要がなくなり、精神的な余裕を持って長期投資を続けることができます。
4:投資対象を理解する
自分が何に投資しているのか、その投資信託がどのような資産に、どのような方針で投資しているのかを理解することも大切です。目論見書などを確認し、漠然とした不安ではなく、具体的なリスク要因を認識することで、市場の変動にも冷静に対応できるようになります。
まとめ:リスクを知ることで、安心して投資の一歩を踏み出せる
新NISAにおける元本割れのリスクは確かに存在しますが、それは投資に付き物であり、決して避けるべきものではありません。むしろ、リスクを正しく理解し、「長期・積立・分散投資」といった基本的な対策を愚直に続けることで、その影響を大きく軽減し、安心感を伴って資産形成を進めることができます。
新NISAは、初心者の方にとって非常に有効な制度です。不安を感じた時にこそ、基本に立ち返り、長期的な視点を持つことが、安心して投資に取り組むための一歩となるでしょう。